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2009年2月 4日 (水)


「Fat Albert Rotunda」 Herbie Hancock

このまえ、交差点で信号待ちしてたら、
なにやら後頭部あたりからピーピーって音がしたんです。
「おや、耳鳴りかしら。。。」
と思いながら、信号が青になって歩き出しても
まだピーピー鳴ってんです。
「おかしいな」と思ってあたりを見回してみたら、
すぐ真後ろでおっさんがでっかい口笛吹いてるわけです。
しかたないからそれに耳を傾けてみると、
明らかにジャズスタンダードの「It Could Happen to You」なわけです。
しかも何回も同じとこ繰り返してるんです。
まぁ、繰り返してることはこの際どうでもいいとして、
問題はメロディに強弱や遠近がなく、一貫して全くのフラットだったということです。
何が言いたいかというと、
この場合「口笛の人」は、おそらくこの曲に大した思い入れはなく、
まして歌詞やその意味までは、理解していなかったはずだということ。
歌詞を頭にインプットして理解すると、
アウトプットが劇的に変化するのです。
「It Could Happen to You」の最初の一節は、
「心を隠し、夜に見た夢にも鍵をかける。そんなことがあなたにも起こるかもね。」
といった内容。
これを理解したり、これについてイメージするだけでも、
メロディは決してフラットで無機質にはなりえないのです。
なぜなら、
まったく意味のわからない言葉だと
単なる音の羅列と認識されるところが、
意味を理解することで、
「こんな歌詞はずかしくて歌えない」とか
「こんなこと昔私にもあったわ」
「思い出したらだんだん腹立ってきたわ」など、
知らず知らずのうちに人間は
言葉に感情をくっつけてしまうからです。
そして、その感情が今度は声や楽器にくっついて
音として外に流れ出すしくみになっているのです。

ハンコックの「Tell Me a Bedtime Story」からは、
言葉なんかなくても感情の波が伝わってくるんです。
その波の上に船を浮かべれば、
僕らはどこにでも行けるんです。


seki@dynamicaudio.co.jp

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